第2回 APEX21のスペーサーを作るには長年のカンが決め手 株式会社蛭川化成工業蛭川安明様

第2回目の「APEX21が行く!!」は前回の続きで長年APEX21のプラスチックスペーサーを製造していただいている栃木県足利市の蛭川化成さん。機械で製造していても、長年のカンや人の目での確認が必須とのこと。APEX21の新人広報の松田が詳しくお話をお伺いしてきました。

APEX21のプラスチックスペーサー製造の工場
(左)蛭川化成工業 の蛭川さん (右)APEX21新人広報の松田

長年のカンや技術をもってしても難しい“コシカケ”

蛭川化成 蛭川

こちらの機械ではコシカケを作っています。

プラスチックスペーサー製造機械 コシカケ
APEX21 松田

えーと…長細い形のスペーサーですよね。

蛭川化成 蛭川

はい、そうです。このコシカケを作るのには、かなり技術がいります。

APEX21 松田

コシカケが?どいういうことでしょう?

蛭川化成 蛭川

このコシカケはドーナツと違って深い型なんです。

APEX21 松田

「深い型」とは?

蛭川化成 蛭川

これがコシカケの型です。

プラスチックスペーサー コシカケの金型
APEX21 松田

ふむふむ。ドーナツは型を見てすぐドーナツの型だとわかりますが、このコシカケは分からないですね。

蛭川化成 蛭川

はい。コシカケは奥行きのある型なので、この向きで作られます。

プラスチックスペーサー コシカケが作られる向き
APEX21 松田

なるほど。横向きに作られるのですね。

蛭川化成 蛭川

はい。プラスチックが固まったら型から抜くのですが、抜くときにこの穴に棒を通して抜きます。

APEX21 松田

ドーナツと違って製造工程が複雑ですね。

蛭川化成 蛭川

はい、工程が複雑ということは、すなわち型からきれいに抜けにくい構造なんです。

APEX21 松田

なるほど、型の奥深くまで入っていることは、容易に型から外すことができないのか…

蛭川化成 蛭川

なので型からコシカケを抜くときは、ゆっくりゆっくりそっと…

APEX21松田

ポン!と抜くというわけでは、ないのですね…。そうか、それを機械でやるには、調整しないとならない。

蛭川化成 蛭川

コシカケのプラスチック素材は再生度合いによってプラスチックの質にバラつきがあるのですが、仕上がりや強度を均一にするために機械の設定の微調整が必要になってきます。
温度を高くしたり、低くしたり。圧力の加減やコシカケを冷やす時間を調整したり…

プラスチックスペーサー コシカケ製造の様子
APEX21松田

なるほど。プラスチックの原材料を見たら、機械の調節はこれくらいとわかるものなのでしょうか?

蛭川化成 蛭川

いいえ。実際に機械を動かしてやってみないとわかりません。初めは材料を少なめに試して…機械が本格的に動き出したら材料の量を増やして試す。だからコシカケを作る際には時間がかかりますね。

APEX21松田

おぉ、そうなのですね。それは、ずいぶん手間がかかるものですね…

蛭川化成 蛭川

機械でそれを操作していくのは長年のカンや技術はいりますが、それでも難しいですね。

APEX21松田

こんなにたくさん作れているので、できて当たり前のように思いますが、だからこそ大変なのですね。

プラスチックスペーサー コシカケ

時代とともに建物が変わる、プラスチックスペーサーも変わる

APEX21松田

作る工程を見せていただいていると「『型』に材料を流し込んで」「『型』から抜いて」というお話から、プラスチックスペーサーの製造は「型」がとても重要だということがわかります。

蛭川化成 蛭川

そうですね。型のサイズでどの機械を使うかも決まってきますので。他にもセットしてない型はたくさんあります。こちらです。

プラスチックスペーサーの金型
APEX21松田

うわー!こんなにたくさん!
プラスチックスペーサーには大きさが色々あるので、そのサイズごとの型があるということなのですね。

蛭川化成 蛭川

そしてこれが…よいしょ。

プラスチックスペーサー ドーナツの金型
APEX21 松田

ドーナツ!

蛭川化成 蛭川

はい、ドーナツの『D10/13-95』です。

APEX21 松田

鉄のテカりやドーナツの形が相まってきれい…まるでオブジェのようです…

プラスチックスペーサー ドーナツ型
APEX21 松田

リフトで運んで来られましたが、重さはどれくらいですか?

蛭川化成 蛭川

両方で600キロです。

APEX21 松田

えー!これがそんなに重たいのですか!

蛭川化成 蛭川

サイコロというスペーサーの型は片方だけで800キロです。

APEX21 松田

いー!たしかに鉄の塊ですからね。それにしても運ぶだけでも大変ですね!

(APEX21の社長の登場)

APEX21 社長

型は鉄だけど鉄にも色々種類があって、たくさん製品を作る型はいい材質で耐久性のある型が必要になってくる。その分、型を制作する費用はかかるんだ。

APEX21 松田

あ、社長!お疲れ様です!

APEX21 社長

プラスチックスペーサーのサイズも時代とともに変わってきて、昔は40だったものが次は50、そして今は60が主流。そして70も徐々に注文が増えてきている。月日が経つごとにサイズが大きくなってきているんだ。

APEX21 松田

なぜ、サイズが大きくなっているのでしょう?

APEX21 社長

それは耐震基準と関係があるんだ。
サイズが大きいほど、建物が強くなっている。昔のマンションは隣の声が聞こえるということがあったけど、今はそんなことはない。それだけ壁が厚くなって、柱が強くなっているということなんだ。

APEX21 松田

時代とともに建物が変化し、プラスチックスペーサーも変化しているということなんですね。コンクリートを流し込んだら見えなくなるからといって、なんでもいいというわけでもなく、ちゃんとスペーサーも建物の耐震に役に立っている。まさしく縁の下の力持ち。

プラスチック製造を支えている栃木県足利市という場所

APEX21 松田

蛭川化成工業さんは、ずっとプラスチック製造をさているのでしょうか?

蛭川化成 蛭川

私で2代目になります。

APEX21 松田

ということは、子どもの頃からプラスチック製造を見てきて、お父さから引き継がれたということですね?

蛭川化成 蛭川

そうですね。足利から少し行った壬生町は「おもちゃの町」だったんです。

APEX21 松田

おもちゃの町?

蛭川化成 蛭川

1960年代にバンダイやトミー、タカラといったおもちゃ会社がありました。その影響で足利もプラモデルなどのおもちゃを作るプラスチック製造業が盛んになりました。

APEX21 松田

へー!プラモデルを作ってらっしゃったのですね。私の子どものころは、プラモデル専門店もあったり、男の子は必ず作っていました。

蛭川化成 蛭川

そうですよね。車のプラモデルはかなり作っていましたね。プラモデルのあとは、ボタンを押して水槽内の輪を棒に入れるおもちゃのウォーターゲーム。

APEX21 松田

あー!はいはい、持ってました(笑)どこの家にもありましたね。

蛭川化成 蛭川

はい。そのあとは、おもちゃが下火になって、MDディスクのケースを作ったり、白物家電の部品を作ったりと…

APEX21 松田

時代の移り変わりを感じますね…。

蛭川化成 蛭川

そうですね。
今から25年~30年ほど前までは足利も400軒ほどプラスチック製造会社があったのですが、今では100軒を切っています。

APEX21 松田

なるほど。中国や東南アジアが台頭してきて人件費の安い製造業がそちらへ流れているとよく聞きます。
それでも、アペックス21は日本の中でも古くからプラスチック製造に携わる足利で、確実な製造技術を持つ職人さんと連携をしてプラスチックスペーサーを作っています。コンクリートを流し込んだら見えなくなってしまうプラスチックスペーサーですが、だからと言って品質は関係ないかといえばそうではないとAPEX21は思います。蛭川化成さんのような職人さんに支えられてAPEX21のプラスチックスペーサーは今日も作られています。

蛭川さん、ルーくん、お忙しい中、貴重なお話ありがとうございました。

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